pasima
UKIHA, FUKUOKA見えないところに手を抜かない。
手間ひまかけた、ものづくり。
龍宮株式会社
代表取締役社長 梯 恒三
デザイナー 荒川祐美
01
福岡県・うきは市。脱脂綿とガーゼでつくられた寝具パシーマを生産する龍宮株式会社。水と人が豊かに結ばれるうきは市で、どのようにパシーマが誕生したのか。開発に至った経緯、梯(かけはし)社長の開発フィロソフィー、そして未来のものづくりについて。普段の企画会議では聞けないお話を教えてもらいました。
抗菌剤や柔軟剤など余分なものは足さず、自然のもめんでつくられるパシーマ。「シンプルだから、心も体も癒される」と、長年のユーザーであるYARN HOMEのデザイナー荒川は太鼓判を押します。
最初にお聞きしたのはパシーマづくりで一番大切な工程、精錬について。龍宮では、綿から油や不純物を取り除き、純度の高い綿製品へと磨きあげる精錬に1日かけています。タオル用の綿は1時間ほどですから、その差は歴然。「龍宮はもともと脱脂綿づくり専門の会社。脱脂綿って傷口の消毒に使われるでしょう?傷口に入れても大丈夫だと思えるまで精錬するんです」と梯さん。安心安全の理由が確認できました。また、〈綿のpH数を健康な皮膚のpH数に近づける〉点にも納得の理由が。「精錬と同様に洗浄も1日かけます。綿に残った洗剤は、ただれや痒みの原因になる。何度も水洗いを繰り返し、最後はお湯でも洗います。名水湧き出る水の郷・うきはだからこそ為せる技です」と梯さん。
それにしても、なぜ脱脂綿メーカーが寝具を作るに至ったのか。あらためて開発の経緯を聞くと、梯さんの父、創業者の禮一郎氏が長年アレルギー性皮膚炎に悩まされており、肌に触れるものを見直そうと考えたことがきっかけだったとか。傷口に触れても安全なほど、繊細かつ清潔な脱脂綿でなら、アレルギーを持つ人々のための寝具を作れるのではないか?禮一郎氏は閃いたのでした。
アレルギー症状を軽減するため、何度でも洗えて埃が出にくい寝具づくりが始まりました。「洗っても中綿が乱れないよう、キルトの針目の数を増やす。短い繊維が埃になることから、繊維の長い綿のみを使用する。一つひとつの製法にこだわり、原型が出来上がるまで、10年もの歳月を要しました」と梯さん。
なぜそこまでしたのでしょう。「見えないところこそ手を抜いてはいけない、納得できないものは世に出さないという考えがありました。失敗を繰り返し、とにかく良いものをつくりたかった」梯さんの瞳の奥が光ります。「梯さんのような、日本で真摯にものづくりに励む生産者との出会いが、YARN HOMEを始めたきっかけです。想いや伝統を、私たち若い世代が発信していかなくては」と荒川。パシーマの品質哲学は、YARN HOMEの立ち上げとそのコンセプトに大きく影響するほどでした。
パシーマが誕生して24年。工場には、全国各地から届いたお客さまの手紙がびっしり。思わず感嘆しました。「ネットが普及した今、手書きで感謝の気持ちを伝えることってないですよね。つくり手と使い手の心のつながりが見える。理想のものづくりです」続いて梯さん。「お客さまの声は大切。こんなところで役立ったというニーズ、こんなものが欲しいという要望、すべて目を通します」使い手の目線に立ったものづくり、あくなき改良が、究極の品質をかなえているといえそうです。
[ものづくりを行う地域への配慮]も印象に残りました。綿の洗浄に利用した水は工場内の水槽で綺麗な水に戻してから排水する。うきは市の新生児に寝具をプレゼントする活動にパシーマを提供する。工場がある村の方に、毎年パシーマを贈呈するなど。龍宮は積極的に地域貢献活動を行っています。その理由を伺うと「長きに渡ってものづくりを続けるためには、地域の皆さんに応援していただくことが、何より大切だと思うからです」と、地域との共生にこだわります。荒川も応えます。「ものづくりを行う地域への配慮や感謝の気持ちは、日本特有の価値観だと思います。こういった日本の心も含めて、後世に伝えていきたいですね」
最後に、梯さんが描く未来について質問しました。「これまでパシーマはアレルギーの方を対象に開発を進めてきました。しかし、肌触りがいい、気持ちがいい、疲れが取れる、などといったご意見をいただいて、眠りに不安を抱える方にとっても最良の寝具であることが分かってきています。今後は、睡眠と健康の関係を研究し、健康になれる寝具を目指して改良を続けたいと考えています」
ここまで到達しても未だ、「パシーマは道半ばの商品」と語る探究心には頭が下がる思いです。日本の匠たちへの尊敬と共感。YARN HOMEの原点を改めて思い起こさせていただいた、貴重な時間となりました。
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福岡県・うきは市。脱脂綿とガーゼでつくられた寝具パシーマを生産する龍宮株式会社。水と人が豊かに結ばれるうきは市で、どのようにパシーマが誕生したのか。開発に至った経緯、梯(かけはし)社長の開発フィロソフィー、そして未来のものづくりについて。普段の企画会議では聞けないお話を教えてもらいました。
抗菌剤や柔軟剤など余分なものは足さず、自然のもめんでつくられるパシーマ。「シンプルだから、心も体も癒される」と、長年のユーザーであるYARN HOMEのデザイナー荒川は太鼓判を押します。
最初にお聞きしたのはパシーマづくりで一番大切な工程、精錬について。龍宮では、綿から油や不純物を取り除き、純度の高い綿製品へと磨きあげる精錬に1日かけています。タオル用の綿は1時間ほどですから、その差は歴然。「龍宮はもともと脱脂綿づくり専門の会社。脱脂綿って傷口の消毒に使われるでしょう?傷口に入れても大丈夫だと思えるまで精錬するんです」と梯さん。安心安全の理由が確認できました。
また、〈綿のpH数を健康な皮膚のpH数に近づける〉点にも納得の理由が。「精錬と同様に洗浄も1日かけます。綿に残った洗剤は、ただれや痒みの原因になる。何度も水洗いを繰り返し、最後はお湯でも洗います。名水湧き出る水の郷・うきはだからこそ為せる技です」と梯さん。
それにしても、なぜ脱脂綿メーカーが寝具を作るに至ったのか。あらためて開発の経緯を聞くと、梯さんの父、創業者の禮一郎氏が長年アレルギー性皮膚炎に悩まされており、肌に触れるものを見直そうと考えたことがきっかけだったとか。傷口に触れても安全なほど、繊細かつ清潔な脱脂綿でなら、アレルギーを持つ人々のための寝具を作れるのではないか?禮一郎氏は閃いたのでした。
アレルギー症状を軽減するため、何度でも洗えて埃が出にくい寝具づくりが始まりました。「洗っても中綿が乱れないよう、キルトの針目の数を増やす。短い繊維が埃になることから、繊維の長い綿のみを使用する。一つひとつの製法にこだわり、原型が出来上がるまで、10年もの歳月を要しました」と梯さん。
なぜそこまでしたのでしょう。「見えないところこそ手を抜いてはいけない、納得できないものは世に出さないという考えがありました。失敗を繰り返し、とにかく良いものをつくりたかった」梯さんの瞳の奥が光ります。「梯さんのような、日本で真摯にものづくりに励む生産者との出会いが、YARN HOMEを始めたきっかけです。想いや伝統を、私たち若い世代が発信していかなくては」と荒川。パシーマの品質哲学は、YARN HOMEの立ち上げとそのコンセプトに大きく影響するほどでした。
パシーマが誕生して24年。工場には、全国各地から届いたお客さまの手紙がびっしり。思わず感嘆しました。「ネットが普及した今、手書きで感謝の気持ちを伝えることってないですよね。つくり手と使い手の心のつながりが見える。理想のものづくりです」続いて梯さん。「お客さまの声は大切。こんなところで役立ったというニーズ、こんなものが欲しいという要望、すべて目を通します」使い手の目線に立ったものづくり、あくなき改良が、究極の品質をかなえているといえそうです。
[ものづくりを行う地域への配慮]も印象に残りました。綿の洗浄に利用した水は工場内の水槽で綺麗な水に戻してから排水する。うきは市の新生児に寝具をプレゼントする活動にパシーマを提供する。工場がある村の方に、毎年パシーマを贈呈するなど。龍宮は積極的に地域貢献活動を行っています。その理由を伺うと「長きに渡ってものづくりを続けるためには、地域の皆さんに応援していただくことが、何より大切だと思うからです」と、地域との共生にこだわります。荒川も応えます。「ものづくりを行う地域への配慮や感謝の気持ちは、日本特有の価値観だと思います。こういった日本の心も含めて、後世に伝えていきたいですね」
最後に、梯さんが描く未来について質問しました。「これまでパシーマはアレルギーの方を対象に開発を進めてきました。しかし、肌触りがいい、気持ちがいい、疲れが取れる、などといったご意見をいただいて、眠りに不安を抱える方にとっても最良の寝具であることが分かってきています。今後は、睡眠と健康の関係を研究し、健康になれる寝具を目指して改良を続けたいと考えています」
ここまで到達しても未だ、「パシーマは道半ばの商品」と語る探究心には頭が下がる思いです。日本の匠たちへの尊敬と共感。YARN HOMEの原点を改めて思い起こさせていただいた、貴重な時間となりました。